開始前~走りこむ前に理解しておきましょう~
京都マラソンまでおよそ3か月になりました。これから本格的に42.195km先のフィニッシュを目指したプログラムの開始です。3か月という期間は短すぎず長すぎず、目標大会に向け、十分な練習を積み重ねて走力を高めることができ、モチベーションを維持し続けることができる期間です。
フルマラソン完走のためには練習でしっかり走りこまないと、当日のフィニッシュは近づいてこないことは、誰もが分かっていることでしょう。しっかり走りこむ、つまりできるだけ大会に近い長い距離を練習で走っておきたい、というのは、フルマラソン未経験者共通の目標だと思います。しかし、長い距離を走るには、短い距離から少しずつ伸ばしていかなければいけないのは当然ですし、いきなり距離を伸ばすと、膝などにケガ(ランニング障害)が起こる可能性が高まります。
初マラソンの当日を脚の痛みや違和感が全くない状態で迎えることが完走への必要条件です。しかし、短期間で急に練習を頑張って走り過ぎると、不安を抱えたままスタートすることになります。急激に走行距離が増えたりペースが上がったりすると、ランニング時に地面から脚に受ける衝撃が短期間に集中して大きくなります。筋量が少なかったり筋力が弱いと、その衝撃を筋肉で緩和することができず、関節周りに大きな衝撃が加わるため、炎症が起こって痛みとなります。そこで、練習量のアップ、走力のアップに先行して、筋肉を強化しないといけません。ケガの予防のためにも、走歴が浅い人ほど、走り込みと併行して筋トレなどの補強トレーニングを行うことが必要です。
3か月前からの1か月間プログラム
初完走を目指す皆さんに、「毎週必ずこの回数は走って、1回でこの距離を走りましょう」というプログラムを提示すると、それを徐々にこなせなくなり、完全にできなかったということで諦め、次第にほとんど走らなくなってしまった、ということが往々にしてあります。そこで、私からは、練習メニューをいくつか提示します。皆さんのご都合や条件に合わせて、種目を組み合わせ、継続実施していきましょう。
● 練習メニュー
1. ロングジョグ(LJog)
余裕を持って「かなりラク」か「ラク」と感じるペースで走り、距離を伸ばしていきます。目的は、脚の筋持久力を高めることです。時間は90~120分、距離では15~20kmを目安の目標とします。1km当たりの目標ペースは設定せず、「かなりラク」、「ラク」と感じている時は何分何秒ペース、脚が重くなってきたのは何分、何kmからと自分のカラダの感覚と時間、距離、ペースを突き合わせながら走っていきます。1~2週間に1回を目安にしましょう。
2. ウォークブレイク(WB)
90~120分走り続けるロングジョグが難しい人は、走りの間に歩きを挟む「ウォークブレイク」を代わりに行いましょう。ウォークブレイクとは、脚が完全に疲れてから歩いてしまうのでなく、計画的にウォーキングを取り入れていく練習法です。ランニングとウォーキングでは使う筋肉の比率が異なるので、ランニングで酷使する筋肉をウォーキングの間に休ませることができます。まだ辛くないのに歩くことに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、ウォーキングを挟むことで水分補給をしっかりできるなどメリットが多く、結果的に長い距離や時間を走ることができます。組み合わせの一例として、9分間ランニングした後、やや速めのウォーキングを1分間行うという10分間を1サイクルとして繰り返す方法があります。
3. 快調ジョグ(Jog)
余裕を持って「かなりラク」か「ラク」と感じるペースで走りだします。時間は30~60分、距離は5~10kmが目安です。ペースアップしても大丈夫と判断できた地点(フィニッシュまであと何分、あと何kmなど)からややペースを上げても良いでしょう。短時間なので早朝や仕事の後でも取り組みやすく、走りの習慣化に繋がるとともに、最後のペースアップで心肺機能も強化されていきます。週に1~3回行います。
4. 筋トレ(WT)
下半身、特に太ももの前とお尻の筋肉を強化します。週1回、脚の筋量アップ目的で行います。スポーツクラブや体育館のジムを利用できるランナーは、トレーニングマシンを使いましょう。脚を前に押し出す「レッグプレスマシン」で股関節周辺の筋力強化、膝を伸ばす「レッグエクステンションマシン」で太ももの前を、膝を曲げる「レッグカールマシン」で太ももの裏を強化します。各種目15~20回を3セットしても、セット間や種目間の休みを30秒以内にすれば、計10~15分で行えます。
トレーニングマシンを使えない人は、次の自体重種目を行いましょう。
5. クロストレーニング(XT)
専門種目以外の運動のことをクロストレーニングと言います。皆さんの専門種目をマラソンとすると、走ること以外の、傾斜ウォーキング、階段上り、自転車漕ぎ、水中ランニング、上記の筋トレなどもクロストレーニングになります。スポーツクラブのジムのフットネス機器を使えば、傾斜、速さ、重さを簡単に変えることができ、30分程の短時間でも大きなトレーニング効果が期待できます。これらの種目は、ランニングのような着地衝撃が脚に加わらないため、ロングジョグの次の日に実施してもケガへのリスクは少なく、逆に疲れた脚に対してのトレーニング効果が高まります。
お勧めの組み合わせパターン
以上の種目の組み合わせ例を示します。
プログラム1)理想型①
・平日1日:ジムで筋トレ(WT)と快調ジョグ(Jog)
・平日1日:ジムでクロストレーニング(XT)
・土曜日にロングジョグ(LJog)又はウォークブレイク(WB)
・日曜日に屋外かジムで快調ジョグ(Jog)
プログラム2)理想型②
・平日1~2日:屋外で快調ジョグ(Jog)
・土曜日にロングジョグ(LJog)又はウォークブレイク(WB)
・日曜日に快調ジョグ(Jog)と筋トレ(WT)
プログラム3)週末集中型
・土曜日にロングジョグ(LJog)又はウォークブレイク(WB)
・日曜日にジムで筋トレ(WT)とクロストレーニング(XT)
(ただし、平日のうち1日は、通勤で早歩き、階段を登るなど、走らなくても行える身体活動を意識して取り組み、脚がだるいなあと夜に感じる程度まで、日中の活動量を高めます。)
プログラム4)短時間集中型
・週2日:快調ジョグ(Jog)
・週1日:ジムで筋トレ(WT)とクロストレーニング(XT)
・月に1~2回:ロングジョグ(LJog)又はウィークブレイク(WB)
これらのプログラムを完璧にできなくても大丈夫、全くやらないよりは少しでもできればOK、少しできたら次週はそれ以上、と考えて実施していきましょう。