【サブ3.5・サブ4応援編】③3か月プログラムの開始 〜「カベ」を破るために〜

プログラム実施前に、練習について理解を深めておきましょう
過去にフルマラソンの完走経験がある人なら、「次回はこの記録で走りたい」と具体的な目標タイムを設定していることでしょう。この連載もサブ3.5・サブ4の記録の「カベ」を破りたい人へのアドバイスです。

しかし、「自分にとって掲げた目標が適切かどうか」「ただの願望になっていないか」を判断するためには、この連載の初回に書いたように、現在の自分の走力の分析が必要です。適切な目標が確認できれば、体力、走力に見合った練習を積み重ねていきましょう。もちろん練習で走った後の結果の振り返りも大切です。「この距離をこの時間・ペースで走った」「ペースは途中から上がった・下がった」というデータを確認し、「走っている時のツラさ・ラクさの感覚、余裕があった・余裕がなかった」、という自分の感度と突き合わせましょう。その繰り返しで練習の質が上がり、大会における適切な目標タイムの設定と当日の適切なペースの維持につながっていきます。

京都マラソンまでおよそ3か月になりました。42.195km先のフィニッシュを目指したプログラムの開始です。3か月という期間は短すぎず長すぎず、目標大会に向け、十分な練習を積み重ねて走力を高めることができ、モチベーションも維持できる期間です。今回は、この1か月の間の具体的なプログラムをご紹介しますが、その前に、まずは練習の内容ついての理解を深めていきましょう。

距離、ペース、そして組み合わせの関係を理解し、自分にあったステップから始めてきましょう。

ステップ1)練習の頻度(回数)と時間・距離を増やしていきます。
「月間走行距離を練習の目的にしてはいけない」とよく言われます。距離だけを目的にすると、いつもラクに長く走れるペースで同じ練習をすることになりがちですが、カラダや脚への刺激(負荷)が単一だと、間もなく刺激が刺激でなくなり、走力アップが停滞してしまいます。一方、先月は200km、今月は250km、来月は300kmと、大きな幅で走行距離を増やしていくと、ランニング障害を起こしやすくなります。

しかし、走る頻度が週4回に達していなかったり、月間走行距離が200km未満の人がサブ3.5・サブ4を目標とするのなら、ここまで量を増やすことが、走力アップ、記録アップに繋がります。走る頻度を増やすことで体重も減っていきます。週末に時間をかけての長い走りこみ(前回紹介しました「非常にラク~かなりラク」なペースのロングジョグ、LSDや、「ラク〜快適」なペースのロングペース走(一定ペース走))を行います。さらに、平日の30分程度のジョグを2、3回と走る頻度を上げると、カラダは常に活動モードになり、ランニングをしていない時の代謝も上がってきます。

ステップ2)フルマラソンの目標ペースより速い「ハイペース走」を週に1回実施しましょう!
ペースが上がれば、呼吸と心臓がより活発に働き出し、また歩幅を広げるため脚の軌道が大きくなり脚のバネも強化されます。呼吸はハーハー、ハッハッ、と少し頑張る位のハイペースを45〜90分の時間持続する「ハイペース走」練習も、平日に週1回取り入れましょう。走り始めからハイペースでなくても、後半にペースを上げていくビルドアップ走でも同様のトレーニング効果が期待できます。

ビルドアップ走についてはコチラ(【サブ3.5・サブ4応援編】②を参照)

ステップ3)1、2週間単位で、練習の質(内容)を変化させていきましょう!
上記1)2)を既に実施できている人は、下に掲げた表の強度列の太字、「キツい」「ややキツい」「快適」「ラク」「かなりラク」の違いを意識した練習を組み合わせ、1、2週間単位で変えていきます。緩急をつけながらも「キツい」インターバル走、気の抜けない「ややキツい」(ハーフマラソンペースの)ハイペース走、気持ち良く「快適」な(目標マラソンペースの)マラソンペース、「ラク」(目標マラソンペースより遅い)なロングペース走、「かなりラク」で余裕がありペースを気にしないジョグ、と走練習は大きく5つに区分できます。

毎週、同じ距離とペースを掛けるのでなく、ややぺースを抑えて距離を伸ばしたり(時には余裕を残す)、やや距離を抑えペースを上げるなど、掛算の答えは一緒でも係数を変えていきましょう。さらに、先週は相当頑張った(質を高めた)から、今週は量を抑えて疲労をしっかり取り、来週は質の高い練習に戻す、といったように、自分の調子(練習タイム)や疲労度からアレンジができるようになれば、ケガを防ぎつつ、質の高いトレーニングが継続できます。

フルマラソンのための走強度分類表
表01

この表の中の「快適」の行を見てください。呼吸は少し弾みますが、スッスッとまだ乱れてはいません。でも、気を抜くと今のペースを維持できなくなる感覚です。これは多くの人にとってフルマラソンの走り出しのペースに相当します。後半からラストにかけて、段々疲れて脚の感覚が辛くなってきますが、少なくとも中間地点ぐらいまでこの呼吸の感覚を維持できていることが、大会では適切なペースということになります。ただし、レース程の高揚感もなく、頑張れない練習では15~25km走練習に、相当するペースになります。

3か月前からの1か月間プログラム:お勧めの組み合わせパターン

次に、練習の組み合わせ例を示します。

プログラム1)理想型

A)通常の週
・平日2日:ジョグ
・平日1日:マラソンペース走またはビルドアップ走
・土曜日にロングペース走
・日曜日にジョグと筋トレ(【初完走応援編】③練習メニューを参照)

B)練習レースのある週
・平日2日:ジョグ
・平日1日:インターバル走またはハイペース走
・土曜日にジョグ
・日曜日に10km、ハーフマラソン、30kmなどのレース出場

プログラム2)週末集中型
・土曜日にロングペース走
・日曜日:ジョグ又はビルドアップ走又はクロストレーニング(【初完走応援編】③練習メニューを参照)
(ただし、平日のうち1日は、通勤で早歩き、階段を登るなど、走らなくても行える身体活動を意識して取り組み、脚がだるいなあと夜に感じる程度まで、日中の活動量を高めます。)

プログラム3)短時間集中型
・週2日:ジョグ
・週1日:ジムで、ジョグまたはクロストレーニングと筋トレ(【初完走応援編】③練習メニューを参照)
・月に2回:ロングペース走またはハーフマラソンレース出場

これらのプログラムの具体的なペースと距離は記載していません。図を参考にしながら、強度(ペース)にあった適切な距離を設定し取り組んでいきましょう。