【スポーツドクターのアドバイス】④京都マラソンコースの走り方

④京都マラソンコースの走り方
走っている間に筋肉に疲労が蓄積して足が動かない、足が上がらないといった感覚は、皆さん経験されていると思います。
弱い運動では、筋肉は呼吸からの酸素によって生み出されたエネルギーだけを使います。しかし、許容範囲を超えた強い運動を行うと、酸素の供給が追い付かない状態となり、筋肉を動かすエネルギーの老廃物である乳酸が筋肉内や血液中に溜まってきます。長距離のランニングにおけるこの許容範囲は人によって異なりますので、許容範囲を超えたスピードで走ってしまうと乳酸がたまり、筋肉がパンパンに張って、脚を動かそうと思っても動かない状態になります。

自己記録更新を狙って最初の元気なうちにむやみにスピードを上げると、この乳酸が蓄積してしまい、後半にスピードを維持するための筋肉を使えない状態になります。よく言われている「イーブンペースでラップタイムを刻んでいく」ということは、「許容範囲内のスピードを保つことで筋肉の疲労物質を後半に蓄積させないランニング」のことです。

では、「イーブンペース」はどのくらいかと言いますと、サブ4では5kmごとのラップは28分、サブ3.5では24分30秒くらいになります。しかし、フルマラソンでこのレベルを維持するためには、練習のために出場するハーフマラソンの大会で5kmごとのスプリットを1分速いスピードの維持を目標にし、サブ4では5kmごとのラップは27分、サブ3.5では23分30秒くらいで走り切れる許容範囲を持つことが必要ではないかと思っています。ハーフマラソンのタイムにするとサブ4では1時間55分、サブ3.5では1時間40分が目安になるでしょう。

では、この許容範囲を向上させるためにはどうすればいいでしょうか。大変苦しい練習になりますが、自分の身体の許容範囲ぎりぎりのスピードで30~60分間走る練習を積むことで、少しずつ速いスピードに対応できる身体を作っていくことができます。こうすることで筋肉がつくのはもちろん、心肺機能を向上させることもでき、乳酸の代謝能力を向上させることにつながります。このほか、心肺機能の向上には、少しスピードを抑えて20~30kmの距離走を組み合わせて行うこと(LSD(Long Slow Distance)トレーニング)が効果的です。

京都マラソンのようにアップ・ダウンが続くコースでは、特に前半の上り下りで平地を想定した設定タイムを維持するのは大変難しくなります。上り坂では平地のスピードに加えて上る動作で筋肉を強く使ってしまうために、自分の身体の許容範囲を超えてしまい、乳酸が産生されやすくなるからです。そして、下り坂ではスピードの維持には筋力を使わないものの、着地の衝撃が大きくなるために筋力をクッションの代りに使うため、平地の走行よりも関節への負担が大きくなってしまいます。京都マラソンでは、前半にイーブンペースが守れない可能性が高いのですが、途中で予定タイムを取り返すために無理なペースアップをすると終盤の失速につながりますので、急激なペースアップは行わず、前半にためたエネルギーを30km以降に出し切るような意識で、ベストタイムを目標に頑張っていただければと思っています。

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