【コラム】④体力と年齢、走力と走歴の関係 

スポーツの結果(スコア、勝ち負け)は、例えばゴルフや野球、サッカーのように、上手く打つ、投げる、蹴る、といった技術的要素が、筋力、持久力、瞬発力(パワー)、柔軟性などの体力的要素と組み合わさって決まる種目がほとんどです。しかし、フルマラソンは、結果(フィニッシュタイム)に対して、体力的要素の占める割合がとても高いスポーツです。ランニングでいう技術的要素はフォームに当たり、良し悪し(効率的か非効率か)の差はありますが、ゴルフや野球のように空振りがあるわけではないので・・・初めてランニングする方でも「走れ」ます。よってフルマラソンはまずは体力勝負のスポーツと言えます。

「体力と年齢」の関係を考えてみます。イメージ図(1)を見てください。

イメージ図(1):「体力と年齢」

図01

およそ20歳を過ぎると体力の低下が始まり毎年徐々に低下し続けます(図中A)。ただ、これは運動習慣のない人の一般的な傾向であり、運動習慣がある人は体力の低下の度合いは緩めです(B)。一度体力が低下しても、その後に運動習慣が定着できれば、中高年でも体力は向上していきます(B1、2)。一方、激しいトレーニングで相当高い体力を持っていた選手が引退後にトレーニングを全くやめてしまうと、体力は急激に低下します(D)。

野球のバッティング、サッカーのボール扱いなど、技術的要素が高い運動では、一度高い技術が身についた元選手には勝てませんが、マラソンの場合、元選手より3年前から走り出した中高年ランナーの方が速いということは十分あることです。特にランニングなどの持久性運動において、体力レベルは向上しやすく下がりやすいという特性があります。できるだけ若いうちから体力を高め運動習慣を維持できれば、高まった体力の低下はさらに緩やかになります(C1、2、3)。

次に「走力と走歴」の関係を考えます。ここで言う「走力」とは「フルマラソン力」ということで、フルマラソンのフィニッシュタイムとします。市民ランナーの場合、まず全身(心肺)持久力と下半身の筋力及び筋持久力の体力的要素を高める、つまり走り込むことでフィニッシュタイムが良くなります。

次に、その走り込みの内容も、「より長く」から、「より速く」、「より速くをより長く」という目標ペースを考えた「スピード持久力」が必要となってきます。さらに、目標レースに向けて、故障なく疲労なく当日を迎える仕上げ・調整法、レースでの最適ペース配分法、30㎞以降を頑張り抜く精神力などが、体力的要素に加わり、複合的にフィニッシュタイムが決まります。

フルマラソンのフィニッシュタイムの年変化をイメージ図(2)で見てください。

イメージ図(2):「走力=フルマラソン力」と走歴
図02

ランニングを習慣化しフルマラソンレースを目標にトレーニングを継続すると、初完走達成、翌年はその記録を20分短縮、その後も10分、5分、3分と5年程の間に記録が大きく伸び続けるランナーは比較的多くいます。そこから記録の向上度合いは鈍化し、停滞、後戻りもありますが、更に5年から10年かけて、タイムを1分、30秒と少しずつ伸ばし生涯ベスト記録を出し、後はタイムが伸びず下降線になりますが低下度を少なくするのが、生涯ランナーの理想形で、私もこれを目指しています(E)。

しかし、フルマラソン1回でその後は全く走るのを止めてしまった人(F)、ひたすら距離を走り込むだけの練習でケガが多く、タイムが数年で伸びなくなり、低下が早く始まった人(G)、記録が伸びなくなったら目標を失い急に止めてしまった人(H)は、せっかく高めた走力、体力を維持することができず、急激に低下します。走力=マラソン力と大いに関連のある持久的な体力は貯金できないのです。

フルマラソンが一過性、短期的なイベントとならないよう(イメージ図(1)のC→B→Aに逆戻りしないよう)に、京都マラソンを目指す過程で高めた体力、走力を、今後も向上、維持できるように、ランニングに関する知識(練習法とケア法)を増やし、効率良く安全にケガなくに走り続け、走歴を深めていきましょう。