【初完走応援編】④時間走で完走への脚づくり 

練習と大会との違い
京都マラソンまで2か月になりました。初めて大会に出場する人は、フルマラソンの距離、又は、それに近い距離を、事前にゆっくりでも練習で走っておきたいと思うことでしょう。練習で走り切れれば安心して更に自信を持って大会に臨めると思います。

技術的な要素の割合が高いスポーツでは、練習でできなかったことは試合や本番でもできません。私は大学の器械体操の授業でバク転をいくら練習してもできず、そのまま実技テストに臨みましたが、当然本番でも成功はできず、補習授業を受けるはめになったのを覚えています(笑)。

しかし、マラソンのように体力的な要素の割合が高いスポーツでは、練習で走れなかった距離やペースも大会では走り切ることができます。実際、練習では20kmしか走り続けられなかったのに、大会では35kmまでは走り続けられ、その後は歩いたり走ったりだったが完走できた。練習では20kmに2時間半かかっていたのに、大会では中間点を2時間15分で通過し、後半はペースダウンしたが4時間45分でゴールできた。というように、練習で走れなかった距離やペースも本番では走ることができることが初心者にはよくあります。京都マラソンのように周りにはいつも他のランナーが走っている。又は、沿道からの声援も途切れることがない環境であれば、大会での頑張り度はマックスになります。大会では練習の倍程の力まで出せるものです。逆に、マックスで頑張るため、30km以降が大変辛く、フィニッシュ後に脚がつりそうになったり、帰宅途中で筋肉痛になり、その後3日以上も続いたりすることがあります。

大会と比べると、一人での練習では頑張り度を上げられないものです。練習では、競うランナーや応援してくれる人はいません。前日の仕事の疲れが残っている時もあります。だから、初めてフルマラソンに挑む人は特に、練習はあくまでも大会へ向けた過程であることを理解しておくと良いでしょう。

このように理解すると、練習への取り組み方に余裕が生まれます。目標は、あくまでも大会当日に達成するものであり、練習では、前回よりも少しでも長い距離を走れたら、又は、以前と同じペースでも余裕を感じていたら、着実にフィニッシュに近づいていると信じ、自信を持って練習を積み重ねていくことです。

大会1~2か月前の練習プログラム
前回紹介した練習プログラムでは、理想型、週末集中型、短時間集中型のいずれの練習の中にも、余裕を持って「かなりラク」か「ラク」と感じるペースで走り出す90~120分のロングジョグが、週1回または月に1~2回組み込まれていました。これからの1か月は、完走への脚づくりの期間とするため、このロングジョグを「時間走」に代えます。目標は、水分・栄養補給やトイレ休憩以外は、設定した時間を走り続けることです。ペースは目標にしません。ロングジョグと同様、余裕を持って「かなりラク」か「ラク」と感じるペースで走り始めますが、「1kmあたり何分何秒」のペースをキープする必要はありません。要するに、ペースは気にせずに設定した時間を走り続けてください。

途中から脚が重くなり走れなくなったら歩いても構いません。ただし、また走れる気持ちになったら走り出します。数分でも走れたらオッケーです。疲れたらまた歩きます。この繰り返しです。前回説明したウォークブレイクで疲れきる前から走りと歩きを繰り返す方法で行っても良いでしょう。

以上を踏まえ、5週間の計画を紹介しましょう。

図01

隔週で「時間走」を行い、間の週にはその前週の「時間走」より短いロングジョグです。示されている距離(km)はこの練習の目標でなく、「その時間走ったらこれくらいの距離になる」という目安です。

「時間走」では、どのようなコースを走るかも重要です。起伏の少ない公園や河川敷の3~5km程度の周回か往復コースを走るのがベストです。フィニッシュ時間間近になれば、周回、往復途中で折り返し、目標時間に大きく差がなく終了するようにします。ある場所や駅などにフィニッシュすることを目標にワンウェイコースで走る場合は、無意識にフィニッシュまで速く着きたい気持ちになり、最初からペースが上がって後半はペースダウンすることがよくあります。「時間走」は、速く走ってもゆっくり走っても終わる時間は同じなので、まずは無理なく余裕のあるペースから走りだした方が、結果的により長い距離を走れることになりますし、初完走を目指す人には適した練習法です。

段階を踏み5週目に3時間走れれば、大会本番の50~75%の距離が走れたことになります。大会直前最後の1か月では、練習量を落としながら調整し、大会でマックスまで頑張り度を上げられるように仕上げでいく段階になります。この方法は次回に解説していきます。