【コラム】⑤ケガの予兆を敏感に感じ取ろう

目標大会に向けての走り込みで、「量」(走行距離)と「強度」(ペース)が増してきます。今までになかった「量と強度」は、新たな刺激となり、体力・走力をアップさせます。しかし、これが過度になると、関節、筋肉、腱にケガ(ランニング障害)が起きる可能性が増してきます。今回は、ケガを予防し、あるいは、その程度を抑え、ケガからの回復を早めるために、自分のカラダの反応に敏感になるためのアドバイスをします。

走り始めの頃、初心者がすぐに経験する痛みは筋肉痛ですね。太ももの前の硬さを感じ、翌日は階段の上り下りやジャンプで痛みます。走っていると次第に膝まわりに鈍い違和感が生まれ、走り続けることが辛くなることや、腰や肩が重くなり張りを感じるということもよくあります。これらの痛みや違和感は、その後の練習で軽減されていけば、ランニング動作に適応するためのカラダの反応ということで、ケガではないと判断してよいでしょう。しかし、走る量や距離が増えていくと、適応しきれずに関節やその周辺に炎症や痛みが出てケガになるので、走練習と併行して筋力や柔軟性を高めておくことが必要です。

フルマラソンというたいへんハードな競技において時間内完走又は記録向上を目標に走りこんでいくと、いくら筋力や柔軟性を高めておいても、ケガが起こる可能性は高まります。

長距離ランニングで、足の裏、足の甲、足首周辺、アキレス腱、ふくらはぎ、膝、お尻、股関節辺りなど、下半身だけでもいろいろな部位にケガが起こることがあります。それらすべてを完全に予防することは大変難しいですが、ある部位にわずかな痛みや違和感があったときに、ケガの予兆を自分で敏感に感じ取れるかどうかがとても大事なことだと思います。

痛いけど我慢したらなんとか走れていた、鎮痛剤を飲むとマシになるので走っていた、という人がいます。こういう人は全く走れなくなって初めて医師に相談、受診されますが、その時にはひどいケガに発展しており、ドクターストップがかかります。そうなると、ランニングなどの下半身の運動は禁止となり、回復時期まで相当な期間を要します。そうこうしている間に、体力も気持ちも低下し、ランニングを完全に止めてしまうこともよくあります。

私はランニング指導者ですが、ランナーから受ける質問や相談は、「この部位がこの程度痛いのですが今後も走って良いでしょうか?」など痛みに関する内容が練習プログラム以上に多いです。私はドクターではないので触って診断はしませんが、いろいろと細かく質問をします。「痛みの種類は?刺すような、鈍い、しびれる、張るような、力が入らないようなものなのか?」「痛みはいつから?」「その痛みが出たキッカケは?どのような練習をしたのか?」「ケガをする前にレースや長い距離を走ったのか?」「走っている時どの時間ぐらいから痛むかあるいは痛みが消える?」「走ってない時にも痛む場合、その時間帯は?」「どんな動作で痛みが増す?」「長い、速い、上り下り、どんな練習の時に痛みが増す?」「スポーツクラブでの運動、自転車、ステップマシン、傾斜を付けたウォーキングでは痛くはない?」などなど。

そのうえで、私自身の経験とそのランナーのランニング経験や練習量、体格から推測し、整形外科を受診した方が良い、1週間程度休まれた方が良い、練習後に冷やした方が良い、痛みの出ない距離やペースで抑えて走ってみては・・・などアドバイスします。

皆さんも、ケガの予兆を感じとり、ご自身にこのような質問を投げかけてみてください。症状や原因を整理し、ランニング専門家のアドバイスや書籍等の情報を参考に改善へのアクションを取れるようになれば、長く楽しく、ランニングを続けられるはずです。

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